• 1998.11.20
    全日空への行政処分についての見解

    全日空への行政処分についての見解

    1998年11月20日



    全日空乗員組合中央執行委員会


    ■航空機使用者たる全日空への行政処分について

    全日空の経営者は、この数年「大競争時代」「生き残り」「儲かる整備」だとして、整備人員を極限にまで減らし続けてきました。具体的には「飛行間点検の整備士1名化」「機材稼働を10%上げる」「整備控除機を減らす(整備のために飛べない期間を短くする)」「予備機の原則廃止」「ステイタイム短縮(地上での航空機滞留時間短縮)」「(整備を含めた)全ての職場の少数化」等です。同時に、現場の乗員や整備士に「競争意識」を植え付け、「オンタイムキャンペーン(何が何でも定時出発)」に駆り立ててきたのです。

     さらに、経営再建推進計画では運航乗務員の訓練までコスト削減策として盛り込むという、安全で選ばれる航空会社を目指すことに反する内容まで含まれています。経営方針の結果、「予備部品がない」「時間がない」「整備する人がいない」状況となっているのです。
    地上の労働組合は別にして乗員組合は長年にわたって、こうした誤った「費用削減」や「現場への競争意識の植え付け」には問題があることを指摘し続けてきました。しかし経営者はこうした声を真摯に受け止めず計画を強行してきたのです。
    結果として、現在問題にされるような事例が発生し、行政処分として決定が出されました。乗員組合は法律に違反した航空機が運航の現場に提供され運航が行われたことは当然、あってはならないことであり、遺憾な事と考えます。同時にこうした違反に対して法律に基づく行政処分について、航空機使用者たる経営者は真摯に受け止めるべきと考えます。
    経営者は、こうした処分を、大事故に至る前の警鐘ととらえ、これまでの不適切な経営方針を改め、抜本的な改善策を実行に移すべきと考えます。
    一方、処分する行政側についても問題があったと考えます。運航の安全に影響を及ぼす経費削減が「競争促進」のもとに進められ、これを運輸省が追認し、あおってきた事実があるからです。

     運輸省は事あるごとに「安全の規制は緩和していない」と言っておりますが、「乗員の訓練時間や実機訓練の削減」「歴史的に2名以上の体制であった飛行間点検整備の1名化」「2名編成機の飛行時間制限の緩和(12時間まで交代要員不必要)」というように、様々な形で事実上の安全規制緩和は進行してきたのです。

     運輸省は、安全基準は変えておらず、更に各社の自主規制で足りるとの態度を取ってきましたが、経営者は、規制緩和をコスト削減の機会ととらえ、それを進めてきました。その末路が今回の事例であると考えます。

     運輸省は企業の自主規制への期待は過度に持つべきではなく、真に利用者の安全を守れる行政に徹するべきです。

     そうした観点からは、全日空に限らず日本の航空会社全てにわたって自主規制が健全に働いているかの検証を行うべきと考えます。

     同時に、これまで進めてきた「競争促進」「事実上の安全規制緩和」の航空政策を運輸省自体が見直す時期に来ていると考えます。

     大事故が起きる前に、行政が、その果たすべき役割を見直し、日本の航空業界が健全な方向へと向かうよう指導、監督すべきと考えます。

    ■航空従事者たる機長への行政処分について











    乗員組合も、「競争促進」「生き残り」を全面に出した経営方針の影響を現場が少なからず受け、油断が入り込む隙があったことには少なからず反省の念を持っています。

     今回問題にされた一連の事例の中でも、より細かい点検と厳しい判断をすべきではなかったのかという気持ちも持っています。しかし、第一義的には、法的には満足しない「規程違反の機体」を会社が現場に提供したことが問題であり「他社との競争のためには何をおいても定時性。多少のことがあっても就航させる」という異常な社内の雰囲気の中で、その後の苦渋の選択(機長判断)のみを責める立場には立ちえません。
    処分の適用法令と理由についてはこれから検証しますが、定期航空会社では整備、運航計画、搭載管理、客室管理などのほとんどは、それぞれの担当者(組織)の作業に委ねることを認め、それらを定めた規程類は運輸省が報告を求め、事実上の監督を行っている。

     例えば、定期航空運送事業者には運航規定と整備規定を設けて、これを運輸大臣の認可対象(すなわち航空法による委任規定)とし、航空従事者および運送事業者がこれら規定に従うことによって、航空法の要請を満足することを期待しています。

     この中で、「違法な(誤った)報告」(具体的には「規程に合わない航空機の提供」)に関してまで、機長責任があるのかについては法律問題として厳密に検討されるべきと考えます。これは機長への道義的責任とは峻別されるべきと考えます。

    ■全日空乗員組合の紹介

    代表者:組合長 石飛 明夫

    組合員数:1568名(1998年11月1日現在)

    組織:本部は東京都羽田空港内。支部として大阪があります。

       全日空、NCA(日本貨物航空)に働く機長、副操縦士、航空機関士等で組織されています。

    以上


    全日空に対する行政処分について

    抜粋

    運輸省航空局

    平成10年11月20日

    1.立入検査の結果別紙の通り違反事例が認められたので、本日全日空にたいし以下の内容の業務改善命令を出した。

      1-1 法令、規定等の厳守及び安全意識の再徹底

      1-2 整備体制の充実

        1)訓練の充実

        2)整備支援体制の強化

        3)規定等の改訂

        4)監査の充実

    2.航空従事者に対する行政処分

     関係する機長、整備士に対し航空業務の停止10日間を予定。現在聴聞の手続き中。



    別紙(抜粋)

    1.検査の概要

     当局の指示により全日空が実施した総点検の対象範囲(約24万便)のうち、約4000便の航空日誌をサンプリングにて抽出し、運用許容基準の適用の適切性について検査した。

    2.検査の結果

     2-1.運用許容基準の適用違反

        1.運航に当たり必須の装備品を不作動のまま就航させたもの

          (1)8月11日1055便

             機長側昇降計不作動のままで就航させた

          (2)10月15日111便

             後部航空灯不点灯のままで、夜間にかかる飛行に就航させた

        2.運用許容基準適用に関して必要な整備処置が適切に行われていないもの

          (1)逆推力装置バルブ表示灯の不具合に関するもの(3件)

          (2)防除氷系統バルブの不具合に関するもの

          (3)発電器冷却バルブの不具合に関するもの

          (4)衝突防止灯の不具合に関するもの

          (5)テイル・スキッド表示の不具合に関するもの

          (6)逆推力装置インタ-ロック機構の不具合に関するもの

          (7)運用許容基準適用に際して必要な整備処置は適切に行われているが社内承認手続きが不備だったもの

     2-2.整備記録の不備

          (1)不具合内容等の記載不備(7件)

          (2)適用する運用許容基準の誤記、未記入等(27件)

     2-3.乗員への情報提供が不適切

          8月16日10便(成田-ニュ-ヨ-ク)

    エンジン始動後にバッテリ-電源が放電している旨の表示がなされたが、当該表示に関する取り扱いが運用許容基準に未設定だったため適切な情報が離陸までに乗員に提供できなかった





    全日本空輸乗員組合 中央執行委員会

    All Nippon Airways Crew Association